無数のパンチカードを空にかざしながら票をマニュアルで数える係員たちの様子が世界中に報道された。
そうした労を積んでも、最終的な得票数が正しかったのかどうかは、今でもミステリーのまま。
あんなことが二度と起こらないようにと、ハッカー集団、電子投票機のセキュリティーを突破!デジタルに投票し、デジタルに得票数をカウントできる機械がその後たりさん開発され、アメリカ全土で積極的な導入の動きが始まった。
ところが、電子投票機とて完壁ではない。
もっとも大きな問題とされているのは、電子投票機のほとんどが紙による記録を残さないことだ。
万が一、投票の操作がうまく作動しなかった場合、あるいはカウント時にハッカーに侵入された場合、有権者ひとりひと-の投票の軌跡をバックアップするものがなければならない。
それが何もないのだ。
さらなる問題は、もちろんセキュリティーである。
投票機の導入は州内の各郡に1任されているわけだが、今回の試験は、カリフォルニア州ですでに認定された機械について、ソースコードやマニュアルを明らかにした上で、ハッカーらに呼びかけて、実際に破ってもらおうとしたものだ。
ただハッカーといっても、みなカリフォルニア州立大学システムに籍を置-コンピューター科学の教授や研究者たち。
ゴリゴリのオタク集団だが、基本的には州政府から給料をもらっている人々。
今回の任務の目的を正しく把握した上で'ハッキングに取り組んだのだ。
その結果がこの通り。
しかもネットワーク上だけでなく'投票現場で物理的にも侵入可能だったというので、またもや電子投票機問題が取りざたされることになった。
通常ならば、ソースコードを渡されるハッカーなどいない。
だから、今回セキュリティーの壁が破られたとしても、実際の選挙時にこれと同じことが起こるとは考えに-い、と第2章 合理と、正義と、情熱の人びという意見も出ている。
ハッカーたちには侵入を試みるための無限の時間が与えられたが、これも現実には起こりえないことだ。
今回の結果に基づいて、カリフォルニア州は認定を敬-消すかどうかを間もなく決定することになっている。
電子投票機は、投票画面のインターフェースでも大きな課題を抱えている。
誰の名前が右ページに-るかとか、投票操作はボタンを押すのか、それともスタイラス・ペンでチェックを書き入れるのか、画面全体がどうレイアウトされているのかなど、ちょっとした違いで大きな勘違いや不公平が起こりえる。
機械が導入されれば便利、とうっかく喜びたいところだが、民主主義のプロセスをテクノロジー・プラットフォームの上で正しく刷新するのは、過剰なほどの慎重さを要する難しい課題なのだ。
それにしても、今回の州政府の情報公開には感心した。
「ハッカーが残らず破って-れました!」というあっけらかんとした発表もさることながら、数日内に開かれるハッカーたちの詳しい成果発表会には、投票機のメーカーも参加して応戦することになっているとハッカー集団、電子投票機のセキュリティーを突破lいう。
いやはや、このオープンさは、やっぱりカリフォルニアである。
2007.8.2海軍の緊急時技術動員ドリル「ストロング・エンジェル」とは 緊急時の技術動員について、アメリカ海軍がシリコンバレーの企業も巻き込んだシミュレーションをここ何年か行っている。
それがちょっと興味深いので、この機会に触れておこ、つ。
このシミュレーションは 「ストロング・エンジェル」という名前で、二〇〇〇年からすでに三回行われている。
軍の専門用語で 「ドリル (予行演習)」と呼ぶらしいのだが、よ#NAME?起こって、取るものも取りあえずやってきたテクノロジストの集団が、さてここで何ができるのかをゼロからリアルタイムで試してみようという「テクノロジー大会」なのである。
ストロング・エンジェルⅢでは、何らかの自然災害によって伝染病が起こ-、さらにこの機会につけこんだテロリスト・グループが通常の通信網を破壊したというシナリオが設定された。
実施されたのは二〇〇六年の夏の終わりの数日間、場所はアメリカ海軍の基地に近いサンディエゴ郊外にある、うらぶれた広大な屋外倉庫である。
集まったのは二三〇人ほどのテクノロジー関係者たちである。
シリコンバレーからは、シスコシステムズ、グーグル、インテルなど、そして他の地域からもマイクロソフト、ボーイング、アカマイ、IBM、クァルコムなどのテクノロジー関連企業が参加し、また大学や病院、一一のNGO、テクノロジーの新興企業なども加わっていた。
みな手弁当での参加である。
「いったいこれをどうやってまとめるのだろうか」。
参加者がやっていることをぐるりと見回して、私はそんな第一印象を持たずにはいられなかった。
それほど、みなまちまちな作業を進めているのである。
たとえばグーグルは、この倉庫にグーグル・グローブのサーバー自体を持ってきて、Gpsつき携帯電話で撮影された写真とテキストメッセージが自動的に地図上にマッシュアップされるようなプログラム開発に取り組んでいる。
また、このサンディエゴ地域の住民調査のデータと病院の位置、規模などのデータと組み合わせ、伝染病が本格的に広がるとどこでベッド数が足-なくなるかといったような予想地図データも出している。
すべてここへ来てからやり始めたことだ。
ボーイングの研究者は、これまでの産業的な組織とは違った分散的なネットワーク組織で、いかに指令を効率的に伝達できるのかを、大きなチャ1-を書いて検討している。
屋外では、ある新興企業が風船のような衛星受信システムをあっという間に組み立てて海軍の緊急時技術動貞ドリル「ストロング・エンジェル」とはしまった。
大型の受信機は現実の災害時には飛行機やトラック輸送などの調達ができず、現地に運び込むのが遅れる場合が多い。
この風船は三〇キロ。
トランクに詰めれば徒歩でも自転車でも運び込める。
実際インドネシアの津波の際には、二日後にこの風船を現地で立てていたという。
人里離れたフィールドへ出て、通信インフラを即席で組み立てようとしているグループ、あるいは、ソーシャル・ネットワークの仕組みを利用して、一般市民から届-近所のレポートを統合しょうとするグループ、狭いトンネルの中を撮影するロボットを操作するグループ、多言語間の翻訳システムを開発するグループなど、それは多様なテクノロジーが「自然災害で町が破壊され、伝染病が広がっている、通信システムも動かない。
さあ、どうする?」というシナリオの中で独自の解決策を探っていたのである。
このストロング・エンジェルを率いるのは、海軍の医療隊司令官のエリック・ラスムセン氏。
国際紛争地域のボスニア、コソボ、スーダン、イラク、そしてハリケーン・カテリーナに襲われたフロリダなど、最近の被災 (自然、人為両方の) にはことごと-足を踏み入れてきた人物である。
彼は、「軍と民間が協力して困難な状況から解決策を兄いだす、アドホックなデモンストレーション」と、このドリルを説明している。
「正規の担当スタッフも置かず、正式な資金源もなく、オフィシャルな政策もタスクもない」。
実にゆるい組織というわけだ。
ラスムセン氏は、朝夕に参加者全員を集めてブリーフィングを行い、そのつど次にすべきことを指示している。
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